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刑事さんは突然に...

2015-04-04カテゴリ:

 
 ラブストーリーは突然に、という事であれば諸手を挙げて喜ぶものだが、
刑事さんは突然に、しかも2人組で事務所にやって来た。

と、いう事になれば当然に、ストーリーの展開はまるで変わってくる。

 取り次いでくれた人から刑事さんの名刺を受け取ると、山梨県警だ。
高速道路をブッ飛ばしても軽く2時間はかかる距離感である。

 
 少し訝しい気持ちになるも、刑事さんを目の前にすると一変した。
頭をペコペコと下げ、両手は前に揉み揉みの情けない姿であったのだろうか、
その2人はカウンター越し、かすかに微笑している。

 
 聞けば、ある事件の容疑者の身辺調査を内偵していたところ、当社が運営
しているレンタル私書箱を契約している事が判明したため、その契約書類の
提示と実際に使用している私書箱を検分させてもらいたい、と言うのだ。

 
 いつの間にか、目の前には警察手帳が見事に開かれている...
その中のバッジは中学生でも本物だと分かるような、重厚な光を帯びていた。

そんなこんなで、私の運転する車で現場に向かうことに相成った。

060828 004

 要は突然に、生まれて初めて刑事さん2人を後部座席に乗せて運転する事に
なるのだが、これがえらい緊張を強いるものだ。

 シートベルト、信号の変化、歩行者への配慮、運転速度及び携帯電話の
着信など、次から次へと気になる事が頭の中をグルグルと回りだす。
愚問と呪文を繰り返す運転となり、車内のムードは当然に暗黒、いや沈黙。

現場に着くなり刑事さんは無駄のない動きをされ、写真を数枚撮影した。

④「店内①」

『ありがとうございます。これで結構です』 

丁寧な物腰で刑事さんからそう言われ、再び車中の人となる。

ようやく、少し和んだような雰囲気となり、思い切って『尋問』してみた。

『昨夜は別の容疑者宅の張込で、夜通し車中にいた』

『1カ月の休みは1日位、2日あれば良い方』

『公務員だという感覚で警察に入った人間は辞めていく』

『この仕事自体が好きだ、という思いがないと続けられない』

より一層と目が覚めるような言葉が車内で重く響き、頷くほかはない。

このような刑事さんが日本の、地域の安全を守ってくれて信じてやまない。

事務所に戻ったら、お茶でもお飲みになりませんか?

 
 これが、私の最後の『尋問』となってしまった。
これに対して .....

『いや、すぐ署に戻らないといけないのです』と、即座に言い切った。

刑事さんの行動力に感嘆した。

会社の駐車場で刑事さんは颯爽と車を乗り換え、西の方角へハンドルを切る。

 
 通行人には滑稽な姿に見えたかもしれない.....
我を忘れたのか、刑事さんの車が見えなくなるまでブンブンと手を振っていた。

 

 その時、沈みゆく太陽が写真のように映えたのは幻想だったのか。
これだけは、少しオーバーな表現なのかもしれない。

photo01

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