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■ 餞別

2021-11-28カテゴリ:

 
 学生の頃、居酒屋でアルバイトをしていた時に餞別、
という行為がある事を初めて知った。
 
 当時、就職が決まって、ようやくアルバイトを辞める事が出来る、
最終日の夜の出来事だった。
 
 帰り際、一緒にホールで働いていた年増の女性から餞別、
と書かれた一枚の小さな封筒を初めてもらった。
 
 就職するに際し、色々入用だったから、
助かった、という気持ちと嬉しかった気持ちが混在したはずだし、
餞別、という粋に感じる計らいがある事に感動した。
 
 それから年齢を重ねていくと、今度は逆に餞別を渡す場面が
少なからず増えて来た。。
 
 正直、時々惜しむような気持になり、情けなくなる時もあるが、
その時はその場面を思い出すと、何故か気持ちが楽になる。
 
 今になって、こんなに長く私の記憶に残っていること自体、
当時渡してくれた人も、まさか夢にも思わないだろう。
 
 自分からは見えないが、相手の記憶に長く残る場面というのは
何か大切な事のような気がしてならない。

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