■ ニールさん
昨年の暮れ、自分にとって起死回生というお客さんが現れた。
それは、ニールさんというイギリス人経営者で日本の社長さんだ。
昨年の秋は、ある工場を長期間借りていたテナントの滞納問題で動揺した。
資金繰りが悪化して、7月から再度、数回目となる賃料滞納が始まっていた。
11月末までには工場を明け渡す約定をもらったが、資金難の中で結構な
床面積を誇る工場の動産処分もあり、片付けもままならない膠着状態になった。
そこで、滞納しているテナントにある提案を持ちかけて、明渡しの作業を
進めさせてもらう事になったが、リスクも伴い、発生もした。
一方で、建物を所有するオーナーには滞納賃料の今後の取扱い方法と
原状回復規定に関する相談を持ちかけていた。
それは、オーナーには不利な条項も入れざるを得ない状況下で、
信頼を失いかねない局面に陥った。
双方より不信感を感じながら、何とか約定の期日には明渡しを履行して
もらい、後継テナントを募集するところまで、何とかこぎつけた。
しかし、オーナーの意向により、限られた時間の中で優良なテナントを
探さなければならなくなり、土俵際に追い込まれた気持ちになった。
最初に見学したお客さんが空振りに終わり、失望。
年越しのくすぶりも覚悟した矢先、そのニールさんが突如現れたのだ。
日本人スタッフの通訳を伴い現れたニールさんは、まさに英国人紳士。
白人経営者と接するのは初めてだったが、契約へ向けて話が直ぐに進んだ。
しかも、契約時には前払い賃料1年分を支払いたいとの意向を受け、驚いた。
失いかけていたオーナーさんとの関係も少しは改善出来たが、
ニールさんというお客さんを介在したものでもあり、ツキが作用した。
契約の日は所用で会えなかったが、引渡しの日にはニールさんにもう一度
お会いしてみたくなった...英語も話せないが何とかなるだろう、と想う。